会計の仕事をしていると自動車にからむ支出の経理処理は欠かせません。
テレワークの会社員が増えているとはいえ、自動車にかかる経費がゼロになることはないし、コロナウィルスの感染リスクを減らすため自動車の使用が増えている会社もあるくらいです。
今回はそんな自動車にかかる経費の勘定科目「車両費」について解りやすく一つの記事にまとめました。皆さんの悩みを解決できるかと思いますよ。
- 車両費について詳しく知りたい方
- 車両費以外を使った経理処理を知りたい方
- プライベートでも社用車を利用している方
- 車両を購入した時の仕訳がわからない方
仕分けの事例も12個紹介しているので、あなたの悩みに該当する事例を探してみてください!
車両費とは?
車両費とは、ガソリン代やオイル交換など車両の使用・維持管理に必要な支払いがあった場合に使われる勘定科目です。損益計算書では「販売費及び一般管理費」に表示されます。
具体例にどんな経費が「車両費」になる?
- ETC料金
- オイル交換
- オイル代
- ガソリン代
- 軽油代(車両)
- 軽自動車税
- 高速代料金
- 自動車保険料
- 自動車取得税
- 自動車重量税
- 自動車税
- 自賠責保険
- 車検代
- 車両修理代
- 車両整備代
- 車両定期点検代
- 車両備品
- 重油代(車両)
- 洗車代
- 任意保険
- パンク修理代
- パーツ代 など
具体的には上のような支出があったときは「車両費」の勘定科目を使うことができます。使うことができると少しあいまいな表現になったのは、実務では違う勘定科目を使う会社も多いからなんです。
例えば、ETC料金を「旅費交通費」としたり、ガソリン代を「燃料費」、車検のメンテナンス代を「修繕費」として経理処理することも間違いではありません。絶対に「車両費」を使わなきゃならないってルールは無いので、経理処理したあとに何を知りたいかがポイントになります。
勘定科目を選ぶポイントは?
車にかかる支出を「車両費」として処理するのは経費の対象(自動車)を焦点にした場合の選択になります。つまり、自動車という対象にかかる経費がいくら発生したのかを把握することが大事な場合です。そうではなく、経費の目的(修理にいくらかかったか・保険がいくらかかったか・税金がいくらかかったか)を焦点にした場合は「車両費」以外の勘定科目を利用するほうが分析しやすくなります。
唯一あるルールとしては、企業会計基準の一般原則で定められている継続性の原則です。
五 企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
引用元:企業会計基準
これは、一度採用した会計方針を原則として毎期継続して適用することを求める原則で、前期はETC料金にかかる支出を「旅費交通費」とし、今期は「車両費」としてコロコロ変えるのは良くないよって決まりのことですね。
「車両費」を使うメリット・デメリット
「車両費」の勘定科目を使うのか、それ以外の勘定科目を使うのか迷われる方もいると思うので、ここからは「車両費」使った時のメリットとデメリットを紹介していきます。企業規模によっても変わってくると思うので参考にしてみてください。
- 車両にかかる経費が一目で把握できる
- 経費処理の負担が軽くなる
- 課税・非課税・不課税が混在し、消費税の計算が複雑になる
- 補助科目を付けないと内訳が把握しづらい
おすすめの経理処理方法
「車両費」を使うかどうかは、上でも紹介した通りメリットもあればデメリットもあります。消費税の免税事業者で事業規模もそこまで大きくないのであれば全て「車両費」処理しても良いですが、ある程度の事業規模以上の方が全て「車両費」をすると経費の分析が難しくなるのでおすすめしません。
そこで、私がおすすめするのは「車両費」を使いつつ、他の勘定科目も利用する方法です。例えば、税金や保険にかかる支出は別科目でその頼み「車両費」にするといった使い分け。例えば、こんな感じで。
- 車両費
-
オイル交換・オイル代・車検代・車両修理代・車両整備代・車両定期点検代・車両備品・洗車代・パンク修理代・パーツ代・ETC料金・高速代料金
- 燃料費
-
ガソリン代・軽油代・重油代
- 租税公課
-
軽自動車税・自動車税・自動車取得税・自動車重量税
- 保険料
-
自動車保険料・自賠責保険料・任意保険料
こんな感じで使い分けると経理処理はある程度簡略化でき、分析したいことは分析できるといった良いとこ取りができます。
車両費の仕訳事例
ここからは具体的な事例をあげ、その仕訳方法を紹介していきます。なお、勘定科目については、上で紹介した使い分けを元に選択しています。(再度、載せておきます)
- 車両費
-
オイル交換・オイル代・車検代・車両修理代・車両整備代・車両定期点検代・車両備品・洗車代・パンク修理代・パーツ代・ETC料金・高速代料金
- 燃料費
-
ガソリン代・軽油代・重油代
- 租税公課
-
軽自動車税・自動車税・自動車取得税・自動車重量税
- 保険料
-
自動車保険料・自賠責保険料・任意保険料
車載備品の取り付けた場合
- ETC車載器を取り付けて現金3万円を支払った。
- スクロールできます
借方 貸方 適用 車両費 30,000 現金 30,000 ETC車載器取付
ガソリン代を支払った場合
- ガソリンを1万円分事業用のクレジットカードで支払った。
- スクロールできます
借方 貸方 適用 燃料費 10,000 未払金 10,000 ガソリン代
任意保険料を支払った場合
- 任意保険の更新時期がきたので、任意保険料5万円が預金から引き落としされた。
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借方 貸方 適用 保険料 50,000 普通預金 50,000 任意保険料
レンタカー代を支払った場合
- 従業員が出張した際にレンタカーを借り15,000円を現金で支払った。内訳はレンタカー代が1万円、ガソリン代が5千円であった。
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借方 貸方 適用 旅費交通費 15,000 現金 15,000 レンタカー代
自動車を修理した場合
- 車両のタイヤが劣化したため、タイヤを取り換えて3万円を現金で支払った。
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借方 貸方 適用 車両費 30,000 現金 30,000 タイヤ交換
駐車場に車両を停めた場合
- 自動車をコインパーキングに止め800円を現金で支払った。
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借方 貸方 適用 車両費 800 現金 800 駐車場代
個人事業主のプライベート利用分の仕訳
- 決算で期中に全額経費として計上していたガソリン代にプライベートで使用した分が含まれていたため、プライベート分3万円分を経費から控除した。(法人)
- スクロールできます
借方 貸方 適用 立替金 30,000 車両費 30,000 事業主振替 - 決算で期中に全額経費として計上していたガソリン代にプライベートで使用した分が含まれていたため、プライベート分3万円分を経費から控除した。(個人事業主)
- スクロールできます
借方 貸方 適用 事業主貸 30,000 車両費 30,000 事業主振替
自動車を車検に出した場合(法人)
- 車両を車検に出し、検査費用50,000円、自動車諸税(重量税他)45,000円、自賠責保険20,000円を現金で支払った。
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借方 貸方 適用 車両費 50,000 現金 115,000 車検 検査費用 租税公課 45,000 車検 自動車諸税 保険料 20,000 車検 自賠責保険
自動車を車検に出した場合(個人事業主)
- 車両を車検に出し、検査費用50,000円、自動車諸税(重量税他)45,000円、自賠責保険20,000円を現金で支払った。車両にかかる事業割合60%
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借方 貸方 適用 車両費 30,000 現金 115,000 車検 検査費用 租税公課 27,000 車検 自動車諸税 保険料 12,000 車検 自賠責保険 事業主貸 46,000 車検 個人利用分
車両をリースした場合
- 営業廻り用としてリースした車両について毎月5万円が預金から引き落とされる。
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借方 貸方 適用 リース料 50,000 普通預金 50,000 車両リース料
従業員の車両を借上げした場合
- 従業員が所有している自動車を借上げ、借上料として3万円を現金で支払った。
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借方 貸方 適用 車両費 30,000 普通預金 30,000 車両借上料
車両を購入した場合
- 営業廻り用の車両を購入した。(内訳:本体代200万円、保険料10万円、自動車税5万円、各種手続費用5万円、リサイクル料1万円)
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借方 貸方 適用 車両運搬具 2,000,000 現金 115,000 車両運搬具 保険料 100,000 保険料 租税公課 50,000 自動車諸税 支払手数料 50,000 支払い手数料 預け金 10,000 リサイクル料
車両を改良した場合
- 配送用のトラックの荷台に冷凍設備を取り付けた際、50万円かかり「車両費」として処理。決算において車両の価値を高める改良であったと気付いたため資産に振り替えた。
- スクロールできます
借方 貸方 適用 車両運搬具 500,000 車両費 500,000 レンタカー代
まとめ:「車両費」勘定科目を徹底解説
今回は「車両費」について、経理処理をする上で必要な情報をまとめました。この記事を読んでもらえれば一通りは理解できる内容になっているかと思いますが、不明点等ありましたらコメントしてください。
最後に「車両費」で注意すべき点をまとめておきます!
- 車両費に該当する支出は、車両の使用・維持管理にかかる費用
- 目的に応じて勘定科目を選ぶ方法もある
- 個人事業主の場合はプライベート分の費用は除外する必要がある
- 車両費で統一すると車両にかかる費用が一目で把握できる。
- 車両費で統一すると経理の負担が減る
- 車両費で統一すると課税区分が混在し消費税の計算が複雑になる
- 車両費で統一すると補助科目を付けないと内訳の把握がしづらい
勘定科目の理解は会計処理において最低限の知識です。ミスなく会計処理をするためにも勘定科目の書籍を一冊くらいはお手元に用意してみてはいかがでしょうか?
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