会計の仕事をしていると自動車にからむ支出の経理処理は欠かせません。
テレワークの会社員が増えているとはいえ、自動車にかかる経費がゼロになることはないですし、コロナウィルスの感染リスクを減らすため自動車の使用が増えている会社もあるくらいです。
今回はそんな自動車にかかる経費に使われる勘定科目「車両費」について説明していきます。
- 車両費について詳しく知りたい方
- 車両費以外を使った経理処理を知りたい方
- プライベートでも社用車を利用している方
- 車両を購入したときの仕訳が分からない方
自動車にかかる経費でどの勘定科目を使えばいいのか迷ったときに、悩みが解決できる記事になっています。

車両費とは?
車両費とは、ガソリン代やオイル交換など車両の使用・維持管理に必要な支払いがあった場合に使われる勘定科目です。
損益計算書では「販売費及び一般管理費」に表示され、税金や保険料を除き消費税の課税区分は「課税」取引となります。
車両費の具体例
具体的には次のような経費に使われる勘定科目です。
- ETC料金
- オイル交換
- オイル代
- ガソリン代
- 軽油代(車両)
- 軽自動車税
- 高速代料金
- 自動車保険料
- 自動車取得税
- 自動車重量税
- 自動車税
- 自賠責保険
- 車検代
- 車両修理代
- 車両整備代
- 車両定期点検代
- 車両備品
- 重油代(車両)
- 洗車代
- 任意保険
- パンク修理代
- パーツ代 など
自動車などにかかる支払いであれば「車両費」の勘定科目を使うことができます。
使うことができると少しあいまいな表現になってしまったのは、実務では違う勘定科目を選ぶ会社も多いからです。
例えば、ETC料金を「旅費交通費」としたり、ガソリン代を「燃料費」として経理処理する会社もあります。
「車両費」以外の勘定科目を使うことについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
その他の勘定科目を使っていいのか?
実は自動車などにかかる費用を「車両費」としなければならないルールはありません。
つまり、経費の対象(自動車)ではなく、経費の目的(税金を払う・車を直す)から勘定科目を選ぶこともできます。
唯一あるルールとしては、一度決めた勘定科目は継続して使い続けなければならないことくらいです。

なお、経費の目的から選ぶ場合に使われる勘定科目は次のとおりです。
経費の目的 | 別科目を使う場合 |
---|---|
ガソリン代 | 旅費交通費・燃料費 |
ETC料金 | 旅費交通費 |
パーツ交換 | 修繕費 |
修理代 | 修繕費 |
洗車代 | 雑費 |
オイル代 | 消耗品費 |
車両備品 | 消耗品費 |
車検代 | 支払手数料 |
自動車税 | 租税公課 |
軽自動車税 | 租税公課 |
自動車重量税 | 租税公課 |
自動車取得税 | 租税公課 |
自賠責保険 | 保険料 |
任意保険 | 保険料 |
車両費を使うメリット・デメリット
自動車などにかかる経費を「車両費」で一括管理するメリットは次のとおりです。
- 車両にかかる経費が一目で把握できる
- 経理処理の負担が軽くなる
とはいえ、デメリットもあります。
- 課税・非課税・不課税が混在し、消費税の計算が複雑になる
- 補助科目を付けないと内訳の把握がしづらい
事業の規模や種類によって「車両費」を使うか、それ以外の勘定科目を使うか決めるのが良いかと思います。

車両費の使い分けの一例
車両費を使うか車両費以外の科目を使うかを考える際に基準がないと判断できないかと思います。そこで一例として私が担当しているクライアント様の使い分けをご紹介しておきます。
車両費</span
- オイル交換
- オイル代
- 車検代
- 車両修理代
- 車両整備代
- 車両定期点検代
- 車両備品
- 洗車代
- パンク修理代
- パーツ代 など
- ETC料金
- 高速代料金
車両費・燃料代
- ガソリン代
- 軽油代(車両)
- 重油代(車両)
租税公課
- 軽自動車税
- 自動車取得税
- 自動車重量税
- 自動車税
保険料
- 自動車保険料
- 自賠責保険
- 任意保険
車両にかかる費用のうち、消費税の取り扱いにより分けてしまう方法です。
決算時の消費税の申告書を作成する場合も楽になります。

車両費のポイント
ここからは「車両費」でおさえておくべきポイントを説明していきます。
プライベートの車両を利用した場合
プライベート用の車両を事業で使った場合には、事業で使用した部分のみ「車両費」として経理処理できます。
借方 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|
車両費 | 事業主借 | 5,000 | ガソリン代 |
なお、事業用の車両をプライベートで使用した場合には、決算においてプライベート部分を除かなければいけません。
借方 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|
事業主貸 | 車両費 | 5,000 | ガソリン代 |

按分比率の決め方
事業用とプライベート用に経費を分ける際の按分比率の決め方は次のとおりです。
- 使用時間割合
- 走行距離割合 など
例えば、年間で走行距離が1万kmで、プライベートで利用した分が3千kmならば、事業の経費にできるのは70%となります。
上記以外にも合理的な基準であれば大丈夫ですが、以下の点には注意しましょう。
- 選択した基準を毎期継続して採用すること
- 根拠となる資料を保管しておくこと
上記の点を注意しておくことで税務署の調査がはいっても安心して対応することができます。
車検時の経理処理
車検を受けた場合は次のような費用がかかります。
- 車検の基本料金
- 自動車税などの税金
- 自賠責保険などの保険料
仕訳では全額「車両費」として処理することも、目的に応じて違う科目で処理することも可能です。
前者の場合の仕訳だと次のようになります。
借方 | 貸方 | 消費税 | ||
---|---|---|---|---|
車両費 | 50,000 | 預金 | 100,000 | 課税 |
車両費 | 20,000 | 非課税 | ||
車両費 | 30,000 | 対象外 |
免税事業者であれば【車両費/普通預金 10万】と経理処理しても問題ありませんが、課税事業者の場合は消費税の課税区分が異なるため、上のように分けて入力する必要があります。
なお、後者の場合の仕訳なら次の通りです。
借方 | 貸方 | 消費税 | ||
---|---|---|---|---|
車両費 | 50,000 | 普通預金 | 100,000 | 課税 |
保険料 | 20,000 | 非課税 | ||
租税公課 | 30,000 | 対象外 |
前者の方が仕訳は楽ですが、実務では後者の仕訳をされている会社が多いように感じます。
個人事業主の場合は、家事按分の計算も必要です。
レンタカー代の経理処理
出張時のレンタカー代やレンタカーのガソリン代は、「旅費交通費」として処理するのが一般的です。
「車両費」として処理しても問題はないので、こちらも会社の方針次第になります。
車両購入時の経理処理
車両にかかる支出で「車両費」として処理してはいけないのが購入時です。
車両は固定資産に該当する為、資産の勘定科目である「車両運搬具」として処理しなければいけません。
車両購入時の仕訳は次の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
車両運搬具 | 200 | 預金 | 221 | 車両○○ |
保険料 | 10 | 自賠責保険他 | ||
租税公課 | 5 | 自動車税他 | ||
支払手数料 | 5 | 各種手続き | ||
預け金 | 1 | リサイクル料 |
こちらの記事では実際の明細書から仕訳処理するまでの手順をご紹介します。
※ただいま執筆中“φ(..〃)カキカキ
車両費の仕訳事例
ここからは具体的な事例をあげ、その仕訳方法を例示しますので参考にしてみてください。
勘定科目については、上で紹介した使い分けを元に選択しています。(再度、載せておきます)
車両費
- オイル交換
- オイル代
- 車検代
- 車両修理代
- 車両整備代
- 車両定期点検代
- 車両備品
- 洗車代
- パンク修理代
- パーツ代 など
- ETC料金
- 高速代料金
燃料代・車両費
- ガソリン代
- 軽油代(車両)
- 重油代(車両)
租税公課
- 軽自動車税
- 自動車取得税
- 自動車重量税
- 自動車税
保険料
- 自動車保険料
- 自賠責保険
- 任意保険
では、仕訳事例を確認していきましょう!
車載備品の仕訳
借方 | 車両費 | 50,000 |
貸方 | 現金 | 50,000 |
ガソリン代の仕訳
借方 | 燃料費 | 10,000 |
貸方 | 未払金 | 10,000 |
借方 | 車両費 | 50,000 |
貸方 | 未払金 | 50,000 |
任意保険料の仕訳
借方 | 保険料 | 50,000 |
貸方 | 普通預金 | 50,000 |
レンタカー代の仕訳
借方 | 旅費交通費 | 15,000 |
貸方 | 現金 | 15,000 |
修理代の仕訳
借方 | 車両費 | 30,000 |
貸方 | 現金 | 30,000 |
プライベート利用分の仕訳
借方 | 立替金 | 30,000 |
貸方 | 車両費 | 30,000 |
借方 | 事業主貸 | 30,000 |
貸方 | 車両費 | 30,000 |
車検時の仕訳(法人)
借方 | 車両費 | 50,000 |
貸方 | 車両費 | 115,000 |
借方 | 租税公課 | 45,000 |
借方 | 保険料 | 20,000 |
車検時の仕訳(個人事業主)
借方 | 車両費 | 30,000 |
貸方 | 車両費 | 115,000 |
借方 | 租税公課 | 27,000 |
借方 | 保険料 | 12,000 |
借方 | 事業主貸 | 46,000 |
リース時の仕訳
借方 | リース料 | 50,000 |
貸方 | 預金 | 50,000 |
借上げ時の仕訳
借方 | 車両費 | 30,000 |
貸方 | 車両費 | 30,000 |
車両購入時の仕訳
借方 | 車両運搬具 | 200万 |
貸方 | 車両費 | 221万 |
借方 | 保険料 | 10万 |
借方 | 租税公課 | 5万 |
借方 | 支払手数料 | 5万 |
借方 | 預け金 | 1万 |
車両改良時の仕訳
借方 | 車両運搬具 | 500,000 |
貸方 | 車両費 | 500,000 |
まとめ:「車両費」勘定科目を徹底解説
今回は「車両費」について、経理処理をする上で必要な情報をまとめました。
この記事を読んでもらえれば一通りは理解できる内容になっているかと思いますが、不明点等ありましたらコメントしてください。
最後に「車両費」で注意すべき点をまとめておきます!
- 車両費に該当する支出は、車両の使用・維持管理にかかる費用
- 目的に応じて勘定科目を選ぶ方法もある
- 個人事業主の場合はプライベート分の費用は除外する必要がある
- 車両費で統一すると車両にかかる費用が一目で把握できる。
- 車両費で統一すると経理の負担が減る
- 車両費で統一すると課税区分が混在し消費税の計算が複雑になる
- 車両費で統一すると補助科目を付けないと内訳の把握がしづらい
勘定科目の理解は会計処理において最低限の知識です。ミスなく会計処理をするため勘定科目の書籍を一冊くらいはお手元に用意しておきましょう!